子育て中の女性研究者に聞く!単身赴任子育ての傾向と対策
Text by blank:a Editorial Department

単身赴任中の女性研究者の間に口コミで広がる、名古屋大学子育て単身赴任教員ネットワーク。
今回その中から6名の女性教員のみなさんのランチ会に潜入し、子育て単身赴任をしている事情や、ネットワークの活動、私生活や研究・教育活動、女性研究者のキャリアについてのホンネを伺った。間違いなく、名古屋大学には未来の日本の研究を元気にするためのヒントがある。


A型インフルエンザ、集まれ!

 

―メンバーの間ではどうお互い助け合っているんですか?

佐々木 誰かが「こんな問題があるんだけれどどうしたらいい?」ってメールを投げて、それにメンバーが返信します。お互いに「自分のところはこうでしたよ」って経験の共有や、アドバイスをしあったり。

田川 あと、メンバー同士で「今日の子供のお迎え、分担しましょうよ」と連絡しあったり。私と上川内さんと田中さんには同じ小学校1年生の子どもがいて、共有できることも多いんです。

田中 そう、小学校の情報共有がすごく大事なんですよね。

上川内 小学校のPTAって、暗黙のルールがいろいろあるんだけれど、うちは最初の子だから学校の事情が全然わからなくて。田中さんが経験者だからいろいろ聞いたりしてます。

佐々木 ただのワーキングママじゃなくて大学教員ママのグループだってところが重要。大学の会議や研究者特有の急な事情で帰りが遅くなったりしても、細かい事情を話さなくても分かり合えるから気楽なんです。違う業種だと「私の職場ではちがいます」とかみ合わず、疲れて終わっちゃうときがあるから。

上川内 そうそう。大学の講義は何があっても絶対に休めない、とか、抜けられる会議と絶対に抜けられない会議があるとか。大学教員っていろいろ特殊な事情があるから(笑)。

佐々木 あと、ちょっと研究者らしくて面白かったのは、インフルエンザが流行ったとき、田川さんが「うちの子A型のインフルエンザなんですけど、誰かA型の人いますか?一緒に面倒見ましょう」って呼びかけた(笑)。同じ型のインフルエンザなら感染しないからね。それで「A型集まれ!」「B型集まれ!」って呼びかけて集まって。

田川 ありましたねー。子供が小さい時って本当に病気ばっかりで、本当に仕事できないから必死なんです!でも、育児を知らない男性の先生は「なんか、お子さん病気ばっかりしてない?大丈夫?」とかって言われるんですけど(笑)。

田中 それ、私もしょっちゅう言われます(笑)。

田川 あのー、そうじゃなくて、子供ってそれぐらい病気するもんなんですよと(笑)。育児してない人にはわかんないんですよね。

 

―どうやってネットワークを知りましたか?

鳴瀧 私が名古屋大学に着任した時は、長男が2歳で次男が9カ月っていう状況だったんですけど、夫とは別居になるし、こんな小さい子供を連れてやっていけるのかって迷っていた時、同じように単身赴任子育てをしている女性教員の方々から着任前にたくさんメールが届いたんです。日常生活はこんなだよ、住む場所はこのあたりがいいよって。教授が男女共同参画室に連絡してくれて、そこからネットワークに繋いでくれたんですね。だから、すごく安心して着任できました。しかも今、佐々木さんと同じマンションに住んでいるんですよ。何かあったときに頼れる人が近くにいたほうがいいからって。

 

―それは心強いですね。

鳴瀧 研究室の立ち上げもすごくスムーズでした。大学教員がキャリアアップするときって、全国で探さないとポストがないし、一度チャンスを逃すとその先数年は回ってこない。でも大きな決め手は名古屋大学の研究環境が良かったからだと思います。

鳴瀧 彩絵 (Ayae Narutaki)
名古屋大学大学院工学研究科 応用物質化学専攻・准教授
東京大学工学部勤務を経て、2歳の長男と9ヶ月の次男と名古屋大学に単身赴任してきた鳴瀧さん。会社員の旦那さんとの同居時代も、乳児の子育てをしながらの研究生活は大変だったそう。ネットワークとは着任決定前から繋がり、先輩の子育て単身赴任教員と情報交換をしながら新生活の準備ができた。生活は安定しているが、もっと仕事をするために、いかに時間を作るかが今の悩み。

 

単身赴任に必須な家族のサポート

 

―旦那さんはどんなリアクションでしたか?

鳴瀧 驚きませんでした。やりたいことを応援するから、正直に気持ちを話してほしいって言われて、じっくり話をして。夫は東京で会社員をしていて、毎週末名古屋に来て一緒に過ごしています。

田川 うちも、夫が自分が子供を引き取ってもいいよって言ってくれました。子供が母乳しか飲めなくて、結局無理だったから私が引き取った
けれど。夫のサポートは大きな決め手になりますね。

 

―せっかくポストがあっても、家族の事情でチャンスをつかめない人も周りにいますか?

上川内 やっぱり、夫が絶対一緒に住んでほしいと言うから東京近辺でしかポストを探せない方はけっこういます。それはそれで、家族一緒に住めて幸せだと思いますけれど。

田川 どうしても夫婦で研究者の家庭では女性のほうがパーマネントポジションを諦めるケースが多いですよね。または別の仕事に就くとか。

佐々木 このネットワークのメンバーの夫はかなり協力的な方ばかりですよね。

田川 うちは夫も研究者ですが、週末中に夫がいるときは食事の準備、買い物、子どもの面倒、全部夫がやります。夫と自分の親の協力は単身赴任子育ての必須要件。子育ては家族みんなで協力しなきゃって感じてくれているからこそ、単身赴任が成り立っていると思います。

上川内 うちの夫と田川さんの夫も仲良しで、週末連絡を取り合って一緒に子供を遊びに連れて行ってくれたりするし、最近、うちの母と田川さんのお母さんまでお互いに連絡を取りあっています。親世代が友達になると、さらにいいですよね。

―家族3世代、すべてのレイヤーがつながって協力しあって子育てしているんですね。

 

佐々木 成江(Narie Sasaki)
名古屋大学大学院理学研究科 生命理学専攻・准教授
お茶の水女子大学勤務後、研究者である旦那さんの名古屋大学着任と同時に特任で赴任、その後男女共同参画室に着任し
た佐々木さんは、女性教員のために国内大学初である学内学童保育所の設置に尽力し実現。現在は研究職に戻り、教授である旦那さんのラボで准教授を勤めるかたわら、アドバイザーとして新しく着任する女性研究者を支え、ネットワークとの橋渡しをしている。

 

無意識のジェンダーバイアス

 

―男性の単身赴任教員はいないんですか?

佐々木 男性が子供を連れて単身赴任するケースはすごく少ないから。ちなみに、三宅さんは夫に子供を預けて単身赴任ですよね?

三宅 そうです。私が単身赴任をすることで、足りないところを家族みんなで補いあい、一人一人が成長する機会になりました。ただ、家族の負担は想像以上に大きく、2年ちょっとで戻ってくることになりました。当時小学校高学年だった娘に「お母さんが仕事で家にいないことを友達に言わないで。変な家って思われたくないから。」と言われハッとさせられました。子どもには子どもの気持ちがあり、「家族の形」というものが彼らにも浸透しているのだと。女性が社会で活躍するためには、このあたりのことも課題ですね。

田川 本当にそうだと思う。子供が社会的なバイアスを学んでしまい、「お母さんが家にいない家庭は普通じゃない」って傷ついてしまうことがある。私も保育園のバザーの準備に参加しなかったら、娘に「ママはどうして来ないの?みんなのママは来てるのに」って聞かれたことがあるんです。

上川内 授業参観もそう。娘から「なんで来ないの?」って聞かれて、「うちは、お母さんも授業があるから行けないの」って答えた。そしたら、「なんで人の授業見て私の授業は見てくれないんだ」って言うんです(笑)。

田川 同じ。うちの子もそれで泣いちゃった。でも、共働きの家庭の数がもっと増えれば「自分だけ違う」って寂しさはないはずでしょう?どの
お家のママもお仕事で来れないわけだから。

佐々木 うちの娘も一度、「うちにお母さんがいる子がうらやましい」って言ったことがあったんです。だから私、「でもママがずっとお家にいたら、学校から帰ってきてすぐ『宿題した?お勉強は?』って聞くよ。それでもいいの?」って言ったら、「嫌だ。働いてていい」って (笑)。

上川内 子供が疑問に思って質問して来た時の答え方ってすごく大事ですよね。

佐々木 お母さんが働いているのはかっこいいってイメージを持って欲しい。逆に、他のお家ではPTAに母親しか来ない、お弁当も母親がいつも作ってるってことを、子供が「あの子のお家はお父さんがなにもしないのって変だよね」って気づけるように育てたいなと思ってる。

三宅 恵子(Keiko Miyake)
名古屋大学大学院理学研究科 生命理学専攻・研究員
海外での研究員を経て、子育てをしながら研究生活を送ってきた経験を活かし、3つの国立大学法人の男女共同参画室の特任教員として大学での支援制度作りに従事。その間、夫の単身赴任(母と子で暮らす)と自身の単身赴任(父と子で暮らす)を経験。夫も研究者。現在は、研究員として植物の研究に従事する傍ら、より現場に近いところで、支援者と研究者の両方の立場から有効な支援策を模索している。

 

「キャリアサポート」の意識のズレ

 

田中 子育て中の女性のキャリアサポートって、少しずれているなと思うことがあるんです。私はポスドク研究員や企業研究員を転々としている時代に出産と子育てを経験しました。妊娠を理由に雇用を打ち切られてしまった経験もありますが、逆に子育て中に「福利厚生」と称して仕事を免除されたり、楽な仕事に移された経験もある。私は研究がしたいし、子育て中でも仕事をしたいから大変でも働いているのに、やりたい仕事ができなかったら意味がないんだよ、って思っていました。

佐々木 楽だけどやりたい仕事じゃないところに移動させられてしまう。親切なのかもしれないけれど、バリバリ研究してキャリアアップしたい女性にとってはその配慮はズレている。

田中 そうそう。それじゃ全然キャリアサポートになっていない。キャリアアップと称して職分を上げてお給料を増やしてくれたって、仕事が面白くなければ意味がない。結局満足できずに、一念発起して名古屋大学に子連れ単身で来ました。

 

―ご家族の反対はありませんでしたか?

田中 実は単身赴任の話が来たのは2回目で、最初のときは義母に反対されて断念しました。でもどうしても諦めきれなかったし、今回が無理ならもう先はないと思ったから、説得を重ねました。だって、夫は子どもを置いて単身赴任していたことがあるのに、私だけ反対されるのもおかしいと思ったのです。実際に単身赴任をしてみたら、逆に家族にとっても良い効果があったんですよ。以前は週末に家から出なかった夫が子どもをプールや公園に連れて行ったり、ご飯まで作ってくれるようになって。びっくりしました。

 

田中 憲子(Noriko Tanaka) Profile
名古屋大学総合保健体育科学センター 体育科学部・准教授
ポスドク時代に妊娠・出産を理由に大学での任期付ポストを諦めなくてはならなくなり、その後も日本学術振興会特別研究員(RPD),企業研究所を転々と渡り歩いてきた経験を持つ田中さん。名古屋大学にキャリアの最後のチャンスをかけて2人の子供と単身赴任したところ、旦那さんが育児や家事に協力的になってくれるという素敵なサプライズが。研究キャリアを絶対に諦めたくない女性研究者を支える仕組みが日本にもっと整うことを願う。カクタスが運営する2016年度エディテージ研究費に採択された際ネットワークを紹介をいただいたことが今回の企画につながった。

 

優秀な女性はまだ余っている

 

―弊社は最近、女性社員率が8割に達しました。女性のほうが優秀でモチベーションも高く、給料よりも仕事自体を楽しんでいるように見えます。

上川内 それはつまり、できる女性がまだ世に余っているっていうことですよ。男性で優秀な人ももちろんいるけれど、優秀な女性はまだ埋もれている。今確保したもの勝ちかもしれない。

佐々木 男性の場合、働かないっていう選択肢がないから、職場は優秀な人からそうでない人まで全部包括しなきゃいけないんですよね。本当はやる気のある女性にもっと働いてもらって、代わりにやる気のない男性はお家に置いておくのがいいんだと思うんだけど (笑)。

田川 優秀な女性は、お家で子どもと2人っきりでじっとしているよりは外に出て活躍したほうが、子どもにとってもいいと思う。

佐々木 子どもが2ヶ月で復帰して保育園に預けていた時、学生がマウスの母子分離の実験についての論文を持ってきてくれたんです。母親マウスを1日何時間か子どものマウスから分離すると普通より多く子供にスキンシップするようになって良いんですって。生物学的にも証明されているから大丈夫ですよ、って言ってくれて。そう言われてみれば、保育園に迎えに行くと、預ける前より子どもがかわいく感じた(笑)。

田川 子どもを預けていると、その分子どもと一緒にいられる時間をすごく大事にしますよね。

上川内 そう。いいことも色々ある。

佐々木 昔、仕事が忙しすぎてもう子どもを産めないかもって悩んでいたら、女性の大先輩の先生たちに「何言ってるの、産めるわよぉ!」って
言われたんです、こう、バーンと背中を叩かれてね(笑)。「子どもはあなた一人の子どもじゃなくて、社会の子なのよ。自分一人で育てようだなん
て偏った考え方はだめよ」って。

上川内 わかります。うちの子も、いろんな人に育ててもらう計画ですから。

佐々木 そうそう。こんな自分のコピーを作るなんて怖いと思って。いろんな人に育ててもらって成長するほうがいい。うちはシルバー人材センターの方に家に来てもらって、家事や帰宅時の子供の世話を全部やっていただいているんです。子育ての問題は、地域に擬似家族を作ることで解決すると思う。

田川 子供って勝手に成長しますからね。放っておくと子供同士でどんどん遠くに行っちゃう。

佐々木 うちの子、この間放っておいたら勝手にお友達とマシュマロを作って道で人に売ってたんですよ。1円で売れたって喜んでた(笑)。

上川内 1円は安すぎて、買ったほうも食べて大丈夫か不安なのでは (笑)。

佐々木 親がいたら絶対止めたんだけど、本人達は「売れたー!」って喜んでた(笑)。子どもって予想もつかないことをしますよね、本当に。

 

上川内 あづさ(Azusa Kamikouchi)
名古屋大学 大学院理学研究科 生命理学専攻・教授
名古屋大学の女性PI採用枠第1号として、36歳の若さで教授として着任し、娘さんとお母さんを連れて単身赴任してきた上川内さん。旦那さんも別地域の大学に勤務する研究者。同じく単身子育て中の田川さんと出会い、ネットワークを立ち上げた。家族の理解とサポートが単身赴任の必要条件だったという。夫婦で子供を大学や学会に積極的に連れて行き、子育てする姿を学生に伝えている。

 

意外に大変!単身赴任の経済問題

 

―単身赴任で子育てしている教員ならではの共通の悩みって、なにかありますか?

佐々木 大学教員の単身赴任のけっこう大きな問題は、実はお金に余裕がないことなんです。ダブルインカムとはいえ、住居を2つ維持するだけでなく、お互いに行き来するための交通費がばかにならない。大学は単身赴任は自己都合という扱いですから、企業みたいに単身赴任手当がつかないんです。

上川内 うちの1年間の新幹線代、調べてみたら100万円超えていました!

田川 うちは200万円いきましたよ!手伝いに来てくれる実家の母と、夫と、2人分だから。

佐々木 子どもが病気でもしようものなら、ベビーシッター代か両親の交通費で1日1万は飛んじゃう。だからね、今考えているのは単身赴任教員用の「シェアハウス」を作ることなんです。

 

―え?シェアハウスですか?

佐々木 単身赴任子育て中の教員がみんな同じ1棟のマンションに部屋を借りて住むんです。マンションの1戸はみんなでお金を出し合って共同スペースにしておいて、子どもの面倒とご飯を作ってくれるシルバー派遣の方を一緒に雇うの。子供の送り迎えも当番制にして、学校から帰って来た子は共同スペースでシルバーさんに遊ばせてもらって、ご飯を食べさせてもらう。これ、最高じゃないですか?

鳴瀧 それ、すごくいい!

田川 大学が用意してくれるのを待っていられないですからね!自分たちでつくっちゃうんだ。

佐々木 そう。一部屋ずつ徐々に名古屋大学の教員で占領していって、最後にその建物自体を占拠するっていうのが、私の野望なんです(笑)。

三宅 すごい構想だね!子供が大きくなったら、新しく来た若いお母さん教員に部屋を譲るっていうのもいいかもね。

佐々木 それ、いいね!ベビーシッターや子供の送り迎え、家事だって、子供が1人でも複数でもかかる労力とお金は同じなんだから、一緒に住んでつながりあって、お互いに助け合うっていうシステムができたらいいと思うんですよ。

 

田川 美穂(Miho Tagawa)
名古屋大学大学院工学研究科 マテリアル理工学専攻・准教授
アメリカの研究機関に夫を残し、幼い娘さんと2人で名古屋大学に単身赴任してきた田川さん。着任時にはお腹に2人目の子を妊娠していて、 名古屋でワンオペ育児中に出産し、産後すぐに新生児を抱えて復帰という偉業を達成。 所属する工学部は男性社会で、深夜勤務や休日出勤は当たり前の文化。後進の女性教員の数を増やすことで、研究者の働き方が変わることが願い。

 

「子連れで子育て」に限界はない

 

ー大学教員のお仕事では「子連れで仕事」はどこまで可能なんでしょうか?

田川 私、2人目を出産した時は博士課程の学生の論文指導があって、その時は生まれたばっかりの子どもを抱っこしながら学生に「そうじゃなくて、こうやって」、「◯◯◯◯って書いて」って口だけで指導していたんですね(笑)。研究は、子供の成長を待てないですから。そうやって学生の後ろに立ってあれこれ言うだけでも、ちゃんと研究って進むんですよね。

上川内 私も夫も、学会の講演は子ども連れでやっています。講演会場の席に座らせておくんですけど、子どもはちゃんと聞いていて、両親が家でスピーチの練習をしているのを見て覚えているから、「あ、今のとこ間違った!」って指摘してきて、会場の人たちがうふふってみんな笑ったりして(笑)。

佐々木 ゼミも普通に子連れでできますよね。以前にお茶の水女子大学にいた時はもっとすごくて、子供を修論発表会や論文審査会に連れていって授乳しながら学生に質問したりしましたよ (笑)。

 

―質問しながら授乳・・・。かっこいいですね。さすがお茶大。

田川 うちの上の子は、大学の会議に一緒に出たりもしています。もちろん子育てしながらできない仕事もありますよ。集中度の高い仕事、論文を書くとか、グラントの申請書を書くとか。そういうのは子供を夫に預けられるときにまとめてやることにして、自分で仕事にランク付けするんです。そして自分が使える時間に効率的に配分していくんです。

佐々木 とりあえず子どもを連れて行っちゃうことがポイントなんですよ(笑)。やってみると意外とできちゃうから。それに、誰かが子連れで働いているのを見たら、自分もできるかもと思うじゃないですか。

 

―皆さんが勇気を出して子供を仕事に巻き込めば巻き込むほど、他の人が楽になるんですね。

上川内 少しずつ、みんなの心理的なハードルを下げていきたい。私は休みの日にも子どもを研究室に連れて行くことがよくあるんです。子どもは学生に遊んでもらえて喜ぶし、私の仕事も捗るし。でもそれだけじゃなくて、男子学生にも女子学生にも、自分の姿を見て考えて欲しいという思いもある。何かを感じてくれれば、未来はきっといい方向に変わるかもしれない。

三宅 女性研究者は出産や子育てに時間を取られて男性より業績が溜まるのには時間がかかるけれど、人生の後半で追いついて、追い越せると思うんです。

上川内 女性の方が長生きだしね。

佐々木 だから「仕事を辞めないこと」、それが一番大切だと思います。低空飛行でもいいから、絶対に辞めないこと。私たちが子育てを頑張って仕事を辞めない努力をしているところを、女子学生も男子学生にももっと見てほしい。それに、研究と家庭生活が両立できるか不安に思っている女子学生には「全然大丈夫だよ」って背中を押してあげたいんです。「全然、こんなんでいけるんだから!」ってね (笑)。

 

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