学術界の壁を破る/研究が大学外に与える恩恵を可視化する
Text by blank:a Editorial Department

クイーン・メアリー (ロンドン大学)リサーチ・インパクト・マネージャー、ナタリー・ウォールへのインタビュー

インパクトのための強固な土台作りへの投資

ウォールが着任したとき、クイーン・メアリーではインパクト・マネジメントの体制が十分に整っていた。「クイーン・メアリーのシステムは本当に素晴らしく、他の大学とは別物です。多くの大学では、インパクトに関するありとあらゆるレベルでここまでの体制は整っていません」とウォールは言う。

クイーン・メアリーのインパクト・チームのメンバーは、リサーチ・インパクト担当の副学長補佐(研究・教育職)に加え、各学部に派遣されている3人のインパクト・オフィサーで構成されている。各学部にはリサーチ・インパクト担当の副学部長がおり、インパクト・チームと密接に連携している。インパクト・チーム以外にも、プロフェッショナル・サービス課の多くのチームがインパクト評価を支えている。

ケーススタディの質を評価するために2度の模擬演習も行われた。このように、クイーン・メアリーはインパクトのための土台作りと強力なネットワーク作りに多大な投資をおこなっている。この強力な体制により、次の大学評価では他大学を抜きんでることをウォールは期待している。

 

 

需要と供給の問題

インパクトの仕事は尽きないとウォールは語る。各大学がインパクトという新しい分野を重視し、インパクト書類の提出を誰にとっても価値のあるものにするためには時間と労力の投資が必要であることを考えると、それも当然のことだろう。「目下、インパクトの仕事は山積みです。しかし、とても大変な仕事なので対処する人員は十分ではありません。どのようなスキルが必要かも考慮する必要があります」とウォールは言う。

では、インパクト・オフィサーにはどのようなスキルが必要なのだろうか。ウォールによると、書類作成の能力はもちろん、対人能力やコミュニケーション能力も必須だ。「インパクト・オフィサーは、人々に新しいことに順応するよう求めるので、彼らを説得する力が必要です」と彼女は語る。インパクトとは、研究や教育のさらに先をいくものであると言うのだ。また、研究文化を理解していることも重要で、実際の研究経験も役に立つ。

 

 

文化変革をもたらす

インパクト・オフィサーの仕事とは、研究者のインパクトへの関心を高めることだとウォールは考える。「私たちは、文化変革を起こしているのです。インパクト・オフィサーは大学の中に入り、人々の研究への見方を変えるのです」とウォールは言う。

さらに彼女はこう続ける。「インパクトは、研究型でない多くの大学でも起こっています。というのも、それらの大学は研究を別の視点でとらえているからです。そして、それらの大学はインパクト評価によって本当に輝くことができるのです。これらの様々な種類の大学が、研究という観点ではトップ・レベルでなくても、素晴らしいインパクトを残しているのを見て感激しました。インパクトが研究者の本当に得意なことを反映し、よい関係性を作り出していることに胸が熱くなります。様々な視点からインパクトを捉えるだけでいいのです。そうすると大学は変わっていくかもしれません。いつも4つ星評価を得られるとは限らないかもしれませんが、あなたの研究のインパクトを示すことにはなるでしょう」

 

 

プロフィール

ナタリー・ウォール ロンドン大学クイーン・メアリー(QMUL) リサーチ・インパクト・マネージャー

ナタリー・ウォールは、ロンドン大学クイーン・メアリーで、学内にインパクト文化を浸透させ、インパクト評価を支援するためのチームを統括している。彼女のチームは、副学長補佐(リサーチ・インパクト担当)とともに、研究者の研究が学術界の外の世界にどのような恩恵をもたらしているのかを研究者自身に見えるようにする手助けをしている。

ウォールは、文学修士号を取得後、カルガリー大学で英語学・英文学で博士号を取得した。ミドルセックス大学のインパクト・アチーブメント・アセスメント・オフィサーを2年間務めたのち、2018年に現職についた。

This post is also available in: 繁體中文 (繁体中国語) EN (英語) 한국어 (韓国語)

Bookmark or share this article:
  • fb-icon
  • twitt-icon
  • linkedin-icon
  • linkedin-icon